女性白バイ隊員と女性性

女性であることをすることは,男女差別を助長するか.

以前テレビ番組で,女性白バイ隊員の特集をしていた.その県警には女性白バイ隊員は二人しかいない,とナレーターは語る.そのインタビューの中で,一人の女性隊員が,「女性のようにきめ細やかな対応をしたい」というようなことを語っていた.きめ細やかだったか,優しさを込めた,だったか,おそらくそんな感じだったと思う.でもともかく,「女性のように」という言葉が気にかかった.

我々は,社会の成員として,女性白バイ隊員に,きめ細やかさや優しさを求めているわけではない.むしろ,的確さや,厳しさ,公平性や正義(そして交通違反を犯してしまう人は少し見逃しちゃくれないか,というあまさ)みたいなものを求めている.だから,そこに女性性は関係ないんじゃないかな,と思った.

ただし,もちろんそれは,彼女だってわかっている可能性もある.彼女だって,派出所勤務でたくさんの事故を見て,それを防止したいから,転属願いを出した,と言うようなことを語っていたから.非常に尊敬できる.僕なんか生まれ変わってもそんな風にはなれない.

おそらく,「女性のように」というのは,回りから常々言われているから,それが常套句みたいになってしまっているのじゃないか.これは不安要素の一つだ.つまり「お前は女なんだから,女にしかできないことを」みたいなことを,教官とか先輩から言われてきたのではないか,という不安要素.それは,「お前は女だ」ということを相手に強制する.常に意識させる,と言ってもいい.というのも,皆さんは自分の性別が○○だ,というようなことを四六時中考えているわけではないでしょう?公衆トイレや,女性専用車両の表示をみて,それを意識する,ぐらいのもんでしょう.もし,職業と性別が結びついて強迫的になってしまったら,それはそれで気の毒だと思います.だって,上に言ったように,白バイ隊員には,そんなこと全然求めているわけではないのだ.僕らは白バイ隊員が女性であろうと男性であろうと,かっこいいなぁ,すごいなぁ,捕まりたくないなぁと思う,だいたいそんなところなのだから.女性であることでもし白バイ隊員がなめられてしまう,と言うようなことがあって,それが嫌ならば(本人はそれには言及していなかったけど),逆に彼女は[女性であることをすること]をやめたほうがいいのかもしれない,とも思う.

だから,もし彼女に会うことがあれば(ないだろうけど),「まあまあ,そんなに女性を売りにしなくてもいいじゃないですか.もうちょっと気楽に,普通に職務に当たったらどうですか.」と言ってあげたい.もちろんそれを売りにしたいなら別だ.でも,ただ女性ということを売りにするのは,警察官としてちょっと違うだろう,という道徳心みたいなものを持っているだろうと思う.だから,それがちょっとしたプレッシャーになっちゃいないか,となんだか気になってしまったのだ.

女性らしく振る舞うこと,を否定する気はさらさらない.あるタイミングで,そういうことをすることは,女性にとって(あるいは男性にとって)有益に働くだろう.だけれども,それを強迫的に考えてはいけない,と思う.だいたい[なければならない]みたいな感じで物事を考えると,いろいろうまくいかないことが多いように思う.性別もそうじゃないか.男にならなければならない,女にならなければならない,という場面はそうそう無い.そういうところは考えないで楽にして,信号無視やらスピード違反やらを取り締まって,一つでも事故が減ればいいなぁと,思う.

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください