コンクリート・ジャングル

手に持った地図をにらむ.額には汗が浮いてくる.夏だ.夏は嫌いだ.

右を見ると,先ほど見たような光景が目に入る.ずっと進んだ道路の先に,T字の角があるようだ.周りのごちゃごちゃした広告と,アスファルトからの熱気で,視界がゆがんでよく見えない.

左を見ると,先ほど見たような光景が目に入る.ずっと進んだ道路の先に,T字の角があるようだ.周りのごちゃごちゃした広告と,アスファルトからの熱気で,視界がゆがんでよく見えない.

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渇き

爆破音が,右耳から聞こえてくる.僕は民家の壁を遮蔽物として,敵の発砲が終わるのを待っている.手が汗ばんでいる.ギュッと握ると,その丸みを帯びた部分が食い込んでいたい.もう2時間も,ずっと握りしめているのだ.

僕は,敵の戦車が通りすぎたことを確認すると,ストップボタンを押して,クーラーの温度を少し下げる.コントローラーの汗をTシャツの袖で拭いて,コントローラーを握りなおす.ええと,そう,戦車.

僕は戦車の視界に入らないようにしながら,前進する.もうかなりヘッドショットを決められるようになってきた.戦車に向かってスモーク・グレネードを投げておく. 続きを読む

ADACHIGAHARA 2.0

「ねえ,あの人,迷ってるんじゃないかな.」

私の後ろを歩く女が,こそこそともう一人の男に話しかけているのが聞こえる.リュックサックを背負い直して,森のなかを歩いて行く私には,なかなか痛い言葉だ.この山のローカルガイドをして2年,道を知り尽くしていたつもりだったが,どこかで道を間違えてしまったようだ.

「さ,もう一息ですよ.」

私は振り返り,笑顔で言う.

「本当?こんなところで野宿なんかになったら私…」

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待ち合わせ

しとしとと雨が降っている.冬の終わりを告げ,春の始まりを祝福するような雨だ.だが,それがうれしいとは思わない.それもこれも,あまりに彼女が遅いことが原因である.

雨がしっとりと服を濡らしている.人が行き交うタイル地の薄暗い通路は,ドロドロになった水で汚れている.

ある瞬間から,目の前を横切って行く人々の歩みが,遅くなっていくように感じる.時間が引き伸ばされていく.10が20秒に,1分が5分になっていく.そして,人々が途切れのないループの中で歩いているような感覚がやってくる.

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