母の弁当と試練の時(これから弁当を作ろうとしている人たちへ)

僕の住んでいる地域では,中学生では給食というものがでない.それが普通だと思っていたら,「違うんだよ,地域によって」と言ってくれたのは確か先輩のKさんだった気がする.

いずれにせよ,そういうわけで,僕は中学生のときから大学院に入って2年目まで,つまり10余年,ほぼ毎日,昼ご飯は母の弁当だった.そしてそれは,愛にあふれた試練だったのだと,今では思う.作るものと食べるものの,相互的な試練だ.

母の弁当は,母には申し訳ないけれどもお世辞にもファンシーであるとは言えない.ゆえに,毎日食べるというのにも,それなりの努力を要する.例えば毎日のように大豆をひじきと人参とで煮たものがはいっていて,こればかりは豆になるようにという願いを込められていても,開けたとたんに「えいやっ!」とかきこんでしまわないと,あとあと食べるのがつらくなる.

それに,弁当というのは運ばれるものだから,出来るだけ携帯性に富むように作っていただかなくては困る.しかし,甘く煮た白豆なんかは,銀色のアルミフォイルの小皿(あるでしょう,並々ギザギザでカップのような形なっているやつが)から飛び出して,白飯について,甘い白ご飯を食べることになってしまう,という事態が起こる.もちろん運ぶ者(つまり僕)が悪いといえばそれまでだが,ソバやラーメンの出前のようにするのは,どう頑張ったって限界がある.それに,昼までには偏ってしまうものでしょう,お弁当って.

まあどれも,おそらく母のそそっかしさから来ているのだと思う.それはそれで愛嬌がある,それがうちの母です.

極めつけは,「ごはん·ごはん事件」である.大学のとき,あれはたぶん学部1年生のときだったと思う.いつものように一人でお弁当を食べようと思って開けると,一つ目のタッパーに白米がびっしり詰まっている.そして,もう一つのタッパーを開けると,そこも白米が詰まっているのであった.これはさすがの母も何かにうんざりして,僕にいやがらせを始めたのだと思った.

だけれども,そそっかしくてそれが愛嬌の母である.笑いと怒りをこらえながら妹に写メをとって(そう,そのころはまだスマートフォンなどはなかった)確認してみると,返事とともに妹から弁当の写真が送られてきた.そう,僕の弁当が「ごはん-ごはん」であるなら,妹の弁当は「おかず-おかず」だったのだ! 二つともおかずなのである.

どちらがつらいかは,聡明なみなさんの判断にお任せします.僕はとりあえずごはんの1段目を食べましたけれども,さすがに二つ目は···

弁当を作るのがつらいと思っている奥さんや主夫の皆様がいたら,ぜひ子どもたちや旦那さん,奥さんに時々フィードバックを求めるといいと思います.自分だけがつらいと思っているのであれば,それはすこし違って見えるかもしれません.とはいえ,文句があるからといって感謝してないわけではありません.そういうものでしょう,家族って.

アンソロジー お弁当。
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