アイスケーキの思い出

”自分のイメージって他人のものと違うものだな”と思ったことがある.そして,それにちょっと驚いたのだ.それを感じたのは,昔,実はオーストラリアに留学していたときだ.(その割には英語が下手だって?うるさいなぁ.)

その時にステイさせてもらっていたホストファミリーのエリス夫妻は,ほとんど毎日食事の後,冷蔵庫からいそいそとアイスクリームを出しては,スプーンでほじくり,それをテレビでも見ながら食べていた.もちろん,英国生まれの移民である二人は,そのあと,カパ(cuppa = a cup of tea)をいただくわけであるが,それはまあどうでもいい.

そんなわけで,僕はきっと,夫妻が食後のアイスクリームが好きなのだろうと思っていた.2人が熊のプーさんみたいにポッコリしたおなかを持っていた理由は,たぶんこれであろう,と思っていた.

しかし,僕の誕生日の日,夫妻は「君のために誕生日ケーキを買ってきたんだ」といった.僕は「それはそれは,どうもありがとう」というような感じで(マセガキだったのだ),どんなケーキかと問うた.すると,食後のお楽しみだという.

食後になって,さあさあケーキ,という段になって出てきたのは,何を隠そうアイスケーキだった.僕の誕生日は7月で,オーストラリアでは秋にあたる.いささか寒々しい感じである.

「ほら,あなたはアイスが好きでしょう.だから,アイスケーキにしたのよ.」とエリス婦人.しかし,僕は彼女にアイスが好きだといった覚えはない.単に毎日夫妻がアイスを食べるから,僕も便乗して食べていただけで,僕はどちらかというと(そのころも今も),ケーキといえばチーズケーキなのである.

さてさて,困った僕は,ありがとう,といっておいしそうにむしゃむしゃアイスケーキを食べた.寒い.なにより,「別に好きではない」というのがはばかられた.一応言っておくけど,いくら欧米人が物言いがストレートだからと言って,プレゼントにケチをつけられたら普通は怒るものである.気を付けるように.

そういうわけで,僕は自分がいつの間にかアイス好きのレッテルを貼られているのに納得がいかなかった.他人の持つ,自分のイメージなんてそんなものなのだ.

今なら言える,そういう話が,結構ある.

 

 

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