インドネシアの茶畑

感動した風景,というのは,じっと目をつぶるとそこにまたありありと再現できるものである.

僕の場合,その風景は,インドネシアで見た,ひと山の茶畑である.

2011年だったかに,僕はインドネシアにいた.一年だけいた.

その時,いろんな人にいろんなところに連れて行ってもらった.僕はあまり旅行は好きではないけれど,それを見かねてたくさんの人が僕を外に引っ張り出してくれた.

そもそも,僕は旅行が好きではない.インドネシアでジャカルタ郊外の,山の中にある(彼は多分自然豊かな,と表現していたかもしれない)親戚の家に行こうといわれた時も,しゃあないなぁという感じで連行された.

高速道路と,突然現れる悪路に揺られて3時間.かの親戚の家につく.高速道路といっても,日本みたいにいいものではありません.断続的な振動がおしりに響くし,それよりもその知り合いのお父さんの運転がハードコアだから,つく頃には内臓という内臓が上下さかさまになっているような,そういう感じだったのです.

そして,そこで何をしたのかは今となってはほとんど覚えていない.もちろん,水シャワーの冷たさは例外として覚えている.(シャワーなんてインドネシアの山奥には無い···のだろう.)

そして,その帰り道に,あの茶畑に寄った.左右に揺れる山道を,ひたすら上った先に,突然,緑が開ける.車を降りて少し歩き,切り立った崖から下を見ると,谷になっていて,農家がぽつりぽつりと見える.正面から太陽の光がこちらに向かってくるが,半分は山にさえぎられて,濃い影を作っている.少しだけ霧みたいなのがかかっていて,周りからは風の音と,自分の息遣いしか聞こえない.お茶のにおいはしていない.インドネシアとは思えないほど,空気が冷ややかだ.

僕らは10分かそこらかしかいなかった.そのあと,すぐにまた,あの3時間への悪夢へと帰っていった(思い出したくもない).でも,あの茶畑を今でもありありと思い出せるのは,きっとすごく感動したからだろう.

いろいろな風景を海外で見たけれど,いつもはっと思い出すのは,じっくりと歩いたところよりも,なんとなく立ち寄った場所であることが多い.そういう突然であった場所のほうが,記憶に残りやすいのだろうか.

 

※「新緑」をテーマに,というアイデアはこちらから.

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